普段食べている野菜には農薬が残っているの?
使用された農薬は、大部分が太陽光や水、微生物や作物体内で分解されますが、収穫時の野菜等にごく僅か(0.0001%単位)に残る場合があります。「残留農薬基準」といって、農作物ごとに残留していても安全な量が食品衛生法に基づき決められています。残留農薬基準を超過した農作物は、国産・輸入を問わず流通が禁止されています。
畑などにまいた農薬はそのまま残っているの?
畑などにまかれた農薬は、日光に当たったり、土の中にいる微生物などによって分解されていきます。ほとんどの農薬はこのようにして10日前後で半分に減ります。土壌中で量が半分になる期間(半減期)が180日以上のものは、原則として農薬の登録はできません。
食べ物にはどんな農薬が使われているの?
農薬は、農薬取締法に基づき厳しい検査を経て、使用者・消費者に対する安全性や環境影響が確認されています。そこで問題がないとされたものだけが、農林水産大臣によって登録され、製造/輸入・販売・使用が認められます。
野菜などに農薬が残っているかどうか検査しているの?
残留農薬の検査は、国や都道府県などが毎年行っており、検出率、違反率ともに近年はほぼ同レベルで推移しています。【平成30年度検査結果 厚生労働省公表資料より】
残留農薬の検出件数 | 3,377 |
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検査総数 | 1,330,328 |
検出率 | 0.25% |
基準値超過数 | 47 |
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違反率 | 0.004% |
農薬って洗うと落ちるの?
散布された農薬はほとんど分解されますが、極微量残留することがあります。
武庫川女子大学の伊藤誉志男前教授のグループが野菜や果物で行った実験では、「水洗い」「皮むき」「ゆでる」「揚げる」などにより減少することがわかりました。
市販されている野菜や果物を皮ごと食べても特に健康への影響は考えられませんが、少しでも残留農薬を減らしたい場合には、「水洗い」や「皮むき」などをすると効果的です。
残留農薬の安全性を確保する仕組みはどうなっているの?
各種長期毒性試験で求められた無毒性量(実験動物に何ら影響の出ない農薬の量:NOAEL)を基礎として、人と動物との違いなども考えたうえ、通常 1/100の安全係数をかけて、人が一生涯毎日摂取し続けても安全な農薬の量(許容一日摂取量:ADI、及び必要に応じて急性参照用量:ARfD)が決められます。
この許容一日摂取量、日本人が平均的に食べる一日当りの農産物の種類・量とその農薬の残留実態等から、農産物ごとに許容できる農薬の残留量が決められます。
これを残留農薬基準といい、これらのしくみにより農産物の安全性は確保されています。
残留基準と安全使用基準設定の流れは下図の通りです。
実際に農薬はどのくらい残留しているの?
厚生労働省がとりまとめた平成30年度検査結果(令和2年度公表)では、農産物につい193万1694件(国産品112万9102件、輸入品 80万2592件)の検査が行われましたが、ほとんどの検査で農薬は検出されませんでした。
基準値をオーバーした違反件数は、国産品で24件、輸入品で113件、合計137件でした。*1
この結果について厚生労働省では、「わが国で流通している農産物における農薬の残留レベルは極めて低い」と結論付けています。
*1 「平成30年度 食品中の残留農薬等検査結果」
(厚生労働省HPより)
毎日の食事の安全性はどうかしら?
厚生労働省は、実際に流通している食品を通常の調理法で調理した後で、一日当たり摂取するであろう農薬量を調査しています。
それによると、いくつかの農薬は調理後の食事から検出されましたが、その量はごく微量で、許容一日摂取量(ADI)の1%未満〜1%台にとどまるものが多くをしめました。*2
この調査結果から、食事により摂取する残留脳薬量は非常に少なく、私たちの健康に影響を与えるレベルではないと考えられています。
*2 平成13年度版 食品中の残留農薬平成12年度 食品中の残留農薬の1日摂取量調査結果
発行(社)日本食品衛生協会
体の中に蓄積されたりしないの?
体内に入った農薬は、胃腸や肝臓で分解され、体外に出てしまいます。
農薬を登録する際の検査では、農薬が動物体内で、どのように代謝されて体外に出ていくかについても詳しく調べられ、安全性が確認されたもののみが登録・販売・使用されます。
かつては、分解しにくく環境中に長期間残留しやすいなど、問題になった農薬もありましたが、これらはすでに使用が禁止されています。
また、複数の農薬による相乗的な作用についての名古屋市立大学の伊東信行名誉教授の実験結果では、「動物実験で、許容一日摂取量(ADI)のレベルで20 農薬を同時に投与しても、相乗毒性と呼ばれるような影響はなかった」と報告されています。